甘い魔法―先生とあたしの恋―
寂しさが募ったりしたら……
涙を我慢できないくらいに、先生が恋しくて仕方なくなっちゃったら。
自分が、その時の感情に任せて動いちゃう気がして、怖かった。
必死に隠してる感情が溢れそうで……、怖かった。
宿題をして、諒子や和馬と遊んで、実家にも帰って苦手なハズの掃除をしたり。
少しでもぼーっとすると頭を支配する先生を、誤魔化す事を探してた。
涙を、
寂しさを、誤魔化す事ばかりを探してた。
夏休みの宿題は、8月の1週目には終わっていた。
From.諒子
sub.急いで!
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駅前の噴水に来て!
こないだ買った
ワンピで来てね!
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服装まで指定したメールが届いたのは、8月の2週目の初め。
……しかも急いでくるように言われてるし。
なんだかよく分からない諒子からのメールに戸惑いながらも、断る理由もないあたしは部屋を出た。
指定されたワンピで。
軋む階段を下りて、食堂の時計が17時40分を指している事を確認してから、寮のドアを開けた時―――……
「きゃっ……っ」
「……っと、」
帰ってきた先生とぶつかった。
一瞬、事態が把握できなくて、ぶつけた鼻を押さえていたけど、すぐに目の前の先生に気付いた。
思わず見上げてしまったせいで、先生と視線がぶつかって……
顔が一気に熱を帯びる。