甘い魔法―先生とあたしの恋―
「……知ってるよ。和馬くんに聞いた。
和馬くんは、矢野センに聞いたらしいけど……でも、あたしも和馬くんも、そんなの聞く前から、実姫の様子がおかしいのには気付いてた」
諒子の言葉に、声を詰まらせた。
いつもの諒子だったら、『なんですぐに言わないの?!』なんて、問い詰めてくるのに……。
押し黙ったままの諒子が
いつもとは違う様子の諒子が、あたしの声をより一層出し難くさせていた。
「諒子……、言わなくてごめん。
気持ちの整理がつかなくて……、誰かに話すまで、気持ちがついてこなくて……」
「大丈夫。実姫の気持ち、よく分かるから……だから、大丈夫」
あたしと同じくらいの低いトーンで話す諒子に、違和感を覚えた。
本当にあたしと同じ気持ちを共有しているような諒子の悲しそうな横顔を、戸惑いながら見つめていた。
すると、あたしの視線に気付いた諒子が、にこっと笑顔を向けた。
「でも、つらいなら相談くらいしてよ。
泣き出したっていいんだからさー。友達でしょ?
実姫がつらい思いしてるのに、知らないなんてさ、なんか寂しいじゃん」
そう笑いかける諒子は、いつもの諒子だった。
別れに関して、何も聞いてこない諒子は、今のあたしの心境を全部分かってるみたいだった。
本当に心から望んだ別れじゃない事も。
まだ、先生を好きな事も……。
全部、見通しているみたいに思えた。