甘い魔法―先生とあたしの恋―
「……うん。ごめん」
「今回は許してあげる。
けど、次からはちゃんと言ってよ?
実姫は啓太くんの時といい、いっつも抱え込むんだから。
もし言わなかったら、購買のコロッケパン買いに行かせるからね」
笑顔で言う諒子に、笑みを零して頷く。
「うん。約束」
「さ、出発出発」
諒子がくるりと方向転換して歩き始めると、ふんわりと香水の香りが届いて……。
さっき振りかけられた香水を思い出す。
「ねぇ……本当に行くの?」
「うん。相手、レベル高いって有名なS大の人だよ」
「でも……」
「知り合いだし、変な事にはならないから安心して」
「そういうんじゃなくて……あたし、まだ先生が……」
戸惑うあたしの手を引いて歩く諒子に、本心を告げる。
駅前の道は、帰宅時間だからか、スーツ姿の男の人で溢れていた。
たまに先生と背格好が似ている人を見つける度に、あたしの目が勝手にその人を追いかける。
先生と同じ香水を感じる度に、思わず振り返る。
先生のわけないのに……
分かってるのに……
勝手に反応する身体は、どうにもできない。