甘い魔法―先生とあたしの恋―
『カレー』
その言葉に思わず大池さんを見上げてしまったあたしの胸が、また静かに高鳴る。
視線に気付いた大池さんは、メロンソーダをテーブルに置きながら、にこりと微笑みかけてくれた。
その微笑みに、キュっと、身体の内側から締め付けられたのが分かった。
だけど……
それは、目の前の大池さんに、じゃない。
大池さんの涼しげな横顔とか
少し意地悪に笑う口許とか
柔らかい茶色い髪とかが、そうさせてるだけ。
少しだけ、先生を連想させるから。
先生を思い出すから。
メロンソーダの緑色が、先生のマスカットゼリーを思い出させるから。
先生も、カレーが好きだから。
あたしは……、大池さんと話しながら、先生にドキドキしてるんだ。
記憶の中の先生に……。
「……でも、寮のカレーはさらさらで薄いよ」
「それは微妙だなー」
いつか先生と交わした会話が、胸に苦しかった。