甘い魔法―先生とあたしの恋―


『カレー』

その言葉に思わず大池さんを見上げてしまったあたしの胸が、また静かに高鳴る。

視線に気付いた大池さんは、メロンソーダをテーブルに置きながら、にこりと微笑みかけてくれた。


その微笑みに、キュっと、身体の内側から締め付けられたのが分かった。


だけど……

それは、目の前の大池さんに、じゃない。


大池さんの涼しげな横顔とか

少し意地悪に笑う口許とか

柔らかい茶色い髪とかが、そうさせてるだけ。


少しだけ、先生を連想させるから。

先生を思い出すから。


メロンソーダの緑色が、先生のマスカットゼリーを思い出させるから。

先生も、カレーが好きだから。


あたしは……、大池さんと話しながら、先生にドキドキしてるんだ。

記憶の中の先生に……。


「……でも、寮のカレーはさらさらで薄いよ」

「それは微妙だなー」


いつか先生と交わした会話が、胸に苦しかった。



< 385 / 455 >

この作品をシェア

pagetop