甘い魔法―先生とあたしの恋―
先生を振り切るように全力で走ったって
先生を振り向けないところまで逃げたって
結局考えるのは、想うのは、先生の事だけで。
そんな自分に呆れながらも笑みが零れる。
こんなに好きなんだって……、涙が零れそうになる。
「実姫ちゃんって高2だよね?
16? 誕生日はいつ?」
「9月12日……」
「9月? 来月じゃん。
なんか女子高生ってすごいモノねだりそうだよなー。
ちなみに何か欲しいモノとかあるの?」
見つめる先で、大池さんの横顔が、カラーボールにカラフルに照らされる。
欲しいモノ……?
「あたしは……」
「うん」
「あたしが欲しいのは……」
あたしが欲しいのは―――……
『市川』
そう呼ぶ、先生の声。
少し甘く香る、先生の匂い。
優しい、先生の笑顔。
息が苦しくなるほどの、先生のキス―――……
『先生』しか
欲しくない。