甘い魔法―先生とあたしの恋―


軽蔑なんか、する訳ない。

諒子の気持ちのどこに軽蔑するの?

幻滅するの?


諒子がどれくらい要くんを好きか、

誰にも言えない想いに、どれだけ苦しんできたのか……


諒子があたしの気持ちを分かるように、あたしだって、分かるんだから。



口にする事さえ戸惑う相手への恋が、

どれくらい苦しいものか……


痛いくらいに、分かる。


『自分の事ばっかり……』なんて、そんな風に自分を責める必要なんかない。

みんなそうだもん。


あたしだって……、悩んでる諒子に気付かないくらいに、自分の事に必死で……。


でも、諒子は気付いてくれた。


自分だってつらいのに、

あたしの苦しさに、気付いてくれた―――……



「諒子……あたし、何も気付けなくてごめんね」


別れる直前、そう言ったあたしを、諒子が笑う。


「隠してたんだから気付かれたら困るんだけど。

実姫と違ってあたしの演技は完璧だってって事でしょ?

……実姫が分かりやす過ぎって説もあるけど」


すっかりいつもの様子に戻った諒子に、思わず笑みを零す。

少し曇った空に、たくさんの星が浮かんで見えた。



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