甘い魔法―先生とあたしの恋―


強気に見えて、本当は泣き虫な瞳。

強がりばかりを言う、透き通った声。

薄い唇。

恥ずかしがって真っ赤に染まる顔。

キスの時にもらす、甘い声。


『先生』

俺をそう呼ぶ、笑顔―――……



「……矢野先生?」


馬場先生の声に、飛んでいた思考回路を元に戻す。


「あ……? あれ、すみません。俺何やってんだろ……」

「あ、いえ……私は全然、っていうか、本当に……」


自然と伸びていた手は、馬場先生の髪に触れていて。

市川の影を追って自然と動いた身体に、俺は心底呆れて目の前のグラスのビールを一気に流し込む。


隣で何か話している馬場先生の声が、耳を抜けていた。



誰を見ても

誰と居ても


考えるのは、一人の事だけ。

想うのは……、市川の事だけ。



俺の本心は……

市川が、まだ俺を想っててくれる事を望んでる。


……重症だな、これ。

病気だな……


……もう、病気だってなんだっていいから。

病気だって事で収まるなら……いっそ、その方がいい。


市川……

俺以外の男を好きになるな。


頼むから―――……






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