甘い魔法―先生とあたしの恋―
※※※
「矢野先生っ、大丈夫ですか?」
ふらつく足元にぼやける視界。
酒には強いけど、今日はちょっと飲み過ぎた。
隣で俺を支える馬場先生に声を掛けられながら、寮までの道を歩く。
送るって言って聞かない馬場先生に、仕方なく折れるしかなかったけど……。
気になるのは、万が一こんなとこを市川に見られたらって事で。
そんな事を考えて、
限界の量を超えてまで飲んだ酒で忘れたかった存在が、まだ頭ん中にある事に気付く。
ふらつく視界に、苦笑いを零した。
なんで、あいつなんだろ……
酔った思考回路の中でも、たった一つ鮮明に映しだされる存在に、ふとそんな疑問さえ湧く。
どこにでもいる普通の女子高生だろ?
どっかが飛びぬけてるわけでもねぇのに。
可愛い性格してるわけでもねぇのに。
それなのに―――……
その全部が、愛しくて仕方ない。
「……やっぱ、病気だな、これ」
「えっ、アルコール依存症ですかっ?!」
「いえ……こっちの話……っと、……っ」
寮の階段を上がる途中、バランスを崩した俺に、馬場先生が巻き込まれる形で倒れ込んだ。