甘い魔法―先生とあたしの恋―
「……馬場先生がすぐそこにいんのに、感じてんのか?」
「……っ!」
注ぎ込まれた言葉と声に、顔が一気に赤く染まった。
と、同時に、馬場先生が返事を口にした。
「いえ。じゃあお大事にしてくださいね」
だんだんと遠ざかっていく馬場先生の足音を聞きながら、あたしは昨日の事を思い出して口を尖らせる。
「……馬場先生、絶対に先生の事が好きだよ」
「かもな。でも、教師なんか問題外だし」
「……生徒抱き締めながら言う言葉?」
「生徒なんかもっと問題外だろ」
当たり前みたいにそう言った先生に、一瞬言葉を失って……。
そんなあたしの胸に浮かんだ不安を振り落とすように、先生が突然あたしを抱き上げた。
「……っ、先生っ?!」
そして、びっくりして身体を強張らせるあたしと目を合わせて、にっと笑う。
「おまえ以外、な」
表情とは違う、優しい言葉。
嬉しさの込み上げてきたにやけた顔を隠すように、あたしは先生の首に抱きついた。