甘い魔法―先生とあたしの恋―
諒子の両親は小学校の時別れて、それからはずっと母親と2人暮らし。
だけど、去年再婚して2つ上のお兄さんができて……。
突然の事に最初こそ戸惑っていた諒子だったけど、今は毎日楽しそうであたしも安心してる。
……家庭がうまくいっていないつらさは、それなりに分かってるつもりだから。
諒子のお母さんは、再婚した今も仕事を続けてる。
医者っていう職業も手伝ってるのかもしれなけど、諒子が言うには仕事が好きでしょうがないらしい。
だから、家の家事はほとんど諒子が任せられている状態。
去年の夏頃、諒子のそんな事情を知って。
色々な家庭があるんだって思い知った。
決してあたしだけじゃないんだって。
だから……だから、お父さんもお母さんも、別に責めてはいない。
……ただ、時々無性に寂しくなるだけで。
「実姫、どっちがいいと思う?」
ドラッグストアのグロスコーナーを独占している諒子が両手に持つのは、オレンジっぽい色とピンク色のグロス。
「んー……オレンジ?」
「あ、やっぱり? あたしもそう思ってたんだー。じゃあこっちにしよっと」
そう言って持ち上げた買い物カゴには、ハンドクリームと化粧水。
安いからってきゅうきょ買い物リストに入ったボディソープとシャンプー。