甘い魔法―先生とあたしの恋―
好きなように噂をした生徒の感心を集めたのは……、新しい校長の佐川先生だった。
『え……昌じぃ?!』
着任式の挨拶のために、壇上に上がった校長先生を見て、先生がそんな声を上げて。
『久しぶりだな、ハルキ。
ちょっとは教師らしくなったか?』
校長先生も笑顔で先生に答えた。
後で聞いたけど、校長先生は先生と同じ施設の出身で、いつか先生が話していた憧れの教師だった。
先生も、佐川先生が校長に昇格したのは知っていたみたいだけど、まさか同じ学校にくるとは思ってなかったみたいで。
佐川先生は、先生を驚かせるために黙っていたらしい。
佐川先生の校長就任で、立場を悪くしたのが教頭だった。
誰が言ったのか分からないけど、教頭の先生への暴言は佐川先生に伝わっていて……
『私も施設の出なんですが、やはり校長の椅子には相応しくないでしょうか』
なんて言葉を教頭に向けたっていうのは、生徒の間でも噂になって、校長ファンが出来たほど。
佐川先生の言葉に、教頭はただ首を振るばかりだったらしいけど。
……ざまぁみろ、なんて思ったのは誰にも言わないけど。
それっきりすっかり大人しくなった教頭は、職員室で威張る事もなくなって、職員室の空気が前の半分の比重になったって先生が言ってた。
もちろん、先生への暴言もなくなったらしいし。
今まできちんと評価されていなかった先生の努力とか、先生の教師としての仕事が、きちんと回り始めた気がした。