甘い魔法―先生とあたしの恋―
そんな騒ぎを起こした校長就任式から10日。
校長と親しい先生は、何かと校長の仕事を手伝っていて帰りも遅かった。
だからって訳でもないけど、楽しそうな先生を前に、自分の誕生日の事なんて言い出せなくて。
結局、先生があたしの誕生日を知ってるかどうかさえも分からないまま、誕生日当日を迎えていた。
「はい。これ、プレゼント」
小さなため息を落としたあたしに、諒子が可愛くラッピングされたプレゼントを差し出してきて……
あたしは驚きと嬉しさの混ざった笑顔でそれを受け取った。
「ありがとー……諒子用意してくれてたなん……」
「今日はそれ着けて矢野センと盛り上がっちゃって」
袋の中から出てきた可愛い下着に、頬を赤く染めながら呆れて笑う。
「ちなみにあたしもお揃いで買っちゃった」
「え、要くん誘惑したの?」
「……秘密」
諒子の赤い嬉しそうな顔が全部を語っていて、笑顔を零す。
「したんだ、誘惑! いつ? どんな風に?」
「どんな風にって……あー……実姫には無理かもねー」
「別に教えてもらって実践しようとしてる訳じゃなっ……って、話すり替えないでよ」
残暑とは言えないほどの暑さの残る校舎に、あたしと諒子の明るい声が響いてた。