甘い魔法―先生とあたしの恋―
『馬場先生、おまえがつけたキスマークすっげぇ見てくるんだけど。
こんな薄いのに目ざといよなー、女って。
多分、そのうち、俺に彼女がいないかとか、おまえに探りいれてくるだろうから、そしたらいるみたいだって言っとけよ』
……先生の先読みはすごい。
あたしは、言われた通りの言葉を、少しだけ気まずそうに見えるように口にした。
「はい、……たまに。
彼女、みたいです……」
「……そう。……彼女できたのね……」
「……」
明らかにショックを受けた馬場先生の後ろ姿に、少し罪悪感を感じながら、安堵なんだかよく分からないため息をついて、靴を履き替えた。
そして、寮に着いた時。
寮の前に立つ、お父さんの姿に気がついた。
「……お父さん?」
あたしの呼びかけに、お父さんはぎこちない笑顔を返した。
空を、沈みかけのオレンジの太陽がキレイに染め上げる。
緩く吹く風が気持ちよくあたしの頬に当たる。
びっくりしたまま近づくと、お父さんは持っていた紙袋をあたしに差し出した。
「え……なに?」
「実姫、今日誕生日だろう」
「そうだけど……なに?」
「……開ければ分かる」
「……うん。ありがと」
突然のプレゼントに、少し戸惑いながらそれを受け取った。
大きな紙袋は、それなりの重さがあって、何かと思いながら中を覗く。