甘い魔法―先生とあたしの恋―
「……はい」
「……―――っ」
ドアを開けて出てきた人物に、目が釘付けになった。
黒と茶色の中間色の髪は少し長めで、目元に掛かるほど。
部屋から流れ出てきた空気には、香水の香りが混ざっていた。
……絶対に何かの間違いだ。
ありえない。ありえない。ありえない……。
だって……えぇっ……?!
どう見てもホストにしか見えないっ!
……っていうか、男って……。
「ああ……市川?」
「!!」
『間違いました』なんて言葉を用意していたあたしに、ホスト男が呼びかける。
頷けずにいるあたしに、ホスト男は僅かに口許を緩めた。
「俺、今年からここに赴任になった矢野。
新米だけど、一応教師だから。いや、一応っていうか思いっきり教師だから」
「矢野……? え、っていうか、先生?! 学校の?!」
「……学校の以外、何の先生だよ」
「っていうか、……え、先生?」
にわかに信じがたい事実に再度問い掛けると、矢野はニヤリと笑って……あたしに顔を近づける。