甘い魔法―先生とあたしの恋―
「実姫……つらいなら俺が傍にいてやるよ」
その言葉に驚いて振り向くと、やけに真面目な顔をした和馬がいて……あたしは思わず吹き出した。
「やめてよ。幼なじみ相手に何言ってんの? なに、告白の練習?」
笑いが止まらないあたしを、登校途中の生徒が追い越しながら不思議そうに見ていく。
一頻り(ひとしきり)笑った後顔を上げると、和馬は少し不貞腐れているようにあたしを見ていて……そんな和馬に笑ってみせる。
「でもありがと。和馬のおかげで元気でた」
「って事は昨日やっぱり何か……」
「ないない」
「本当かよ。大体、実姫はいつも俺に隠し事して……」
ムキになって聞いてくる和馬を振り返った時、和馬の向こうに矢野の姿が見えた。
あたし達よりも数メートル遅れて歩いてくる矢野の周りには……数人の女子。
そしてその真ん中で矢野が小さく笑顔を浮かべていた。
「……ハーレム」
「は? ……ああ、矢野センか」
あたしが呟いた言葉に、和馬が後ろを振り向く。
『矢野セン』
矢野センセーのセーだけを省略した安易なあだ名は、昨日の今日ですでにもう生徒たちに浸透していた。
立ち止っていたあたし達に矢野集団が追い付いて……追い越す瞬間、矢野がちらっと視線を向けた。