甘い魔法―先生とあたしの恋―
特に、啓太の事に関してはすごく過敏に反応するから。
きっと正義感が強いから、同じ男として許せないんだろうけど。
「ほらっ、遅れちゃうよ」
納得いかなげにしている和馬に笑顔を向けて、目が合う前に逸らした。
本当の理由が言えないでいる腫れた目を見られるのは……少し後ろめたくて。
教室に入って諒子と顔を合わせても、諒子は何も言わなかった。
腫れた目に気付かないハズがないのに……それどころか、昨日の事さえ一言も口に出さなかった。
諒子の優しさに、また胸が痛んだ。
※※※
「市川先輩」
昼休み、いつものように諒子と学食に行った帰り。
教室に向かう途中、後ろから呼び止められた。
振り向くと、そこには小柄な女の子が笑顔を向けていて……知っている顔に、あたしは一瞬言葉を失った。
「あ……、吉岡さん……」
「突然でびっくりしました?」
「うん……この学校受けたんだ……」
吉岡さんは中学の後輩で、同じバスケ部だったしそれなりに話はした事がある。
けど……はっきり言って、あまりいい関係じゃなかった。
その理由は……。
「これから清水先輩のところに顔見せに行くんです」
「……そうなんだ」
他でもない和馬だった。