甘い魔法―先生とあたしの恋―
「……ホストにでも見えた?」
「……っ」
からかわれたのは分かったけど、図星なだけに言葉が見つからなかった。
「……先生がなんでこんな所に住んでるの?」
代わりに用意した疑問を投げかけると、ホスト男……じゃなかった、矢野が少し面倒くさそうに答えた。
「……別に。ここはもともと教師とか生徒が住む場所じゃねぇらしいけど……ちょっと事情があって。
……おまえもそうだろ?」
「……まぁ」
「じゃあお互い様だし、詮索はなしな」
急に向けられた寂しそうな笑み。
『詮索はなし』
もちろん詮索なんかされたって嫌だし、矢野の詮索をするつもりもないけど……。
なぜだか、矢野の言葉と態度に突き放されたような……複雑な気分になった。
一線引かれた。
そんな感じがして……言葉が出てこない。
「これ、鍵な」
言われて手を出すと、手のひらの上にポトンと軽い鍵が渡された。
……骨董品?
いや、よく言えば……アンティークに見えない事もないけど。
とにかく作りの古い鍵が渡されて、あたしの頭に不安が過る。