甘い魔法―先生とあたしの恋―


「ねぇ……コレ、大丈夫なの?」


考えてみれば、寮の入り口にだって鍵はなかったし、初めてここに来たあたしだってすんなりここまで来れた。

って事は、誰でもそれが可能って事で。

その上、唯一ある鍵はこんな頼りない感じで。


女子高生の1人暮らしには、あまりにも物騒すぎない?


今までもほとんど1人暮らしみたいなもんだったけど……さすがにコレはちょっと。


「こんなボロいとこ、誰も来ねぇよ。泥棒だって場所を選ぶって」


……いや、泥棒だけじゃなくて。

あたしの心の呟きを読み取ったように、矢野はふっと笑みを落として言葉を続けた。


「まぁ、何もないとは思うけど……。

俺、夜は必ず部屋にいるから何かあったら呼べよ」


……無理。

その前に、矢野が信用できないし。


防犯ブザー、確か鞄の中に詰め込んだっけ。

あの安っぽい音は外まで届くかな……。


教師だっていう矢野に失礼な事を考えていると……不意に視線を感じてあたしは顔を上げた。




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