甘い魔法―先生とあたしの恋―
隠してる訳でもないけど、なんとなく自分からはあまり話してこなかった家庭事情。
なのに……矢野になら話してもいい気がしたのはなんでだろ。
大した言葉なんかもらってないのに、やけにすっきりして眠りにつけたのは、
なんでなんだろ。
テーブルに並んだ、2つのゼリー。
矢野にもらったゼリーに自然と笑みが零れたのは……なんで?
……聞き上手だから?
……さすがホスト。
最終的にホストを理由に片付いた問題に、ふっと笑みが零れた。
そんな考えを巡らせながら到着した、1ヵ月振りの家。
寮の鍵なんかより何倍も頼もしい鍵で玄関を開けると、ガチャンと少し重たい音を立てて鍵が開いた。
……もし、お父さんがいたら。
そんな考えに少しちゅうちょしてから玄関のドアを開けると、静まり返った空気があたしを迎え入れた。
人の気配なんかこれっぽっちもしない家に、安心したような、少しだけガッカリしたような……。
安心の方が強い気持ちに寂しさを感じながらリビングに行くと、テーブルの上に封筒が置いてある事に気付いた。
『実姫5月分』
そっけない言葉を確認してから、その封筒を鞄に入れた。