甘い魔法―先生とあたしの恋―
恐る恐る見上げると、驚いたような……ショックを受けたような顔をした啓太がいた。
呆然とあたしを見下ろしている啓太は、何かを考えているのか動く様子はなくて……。
あたしは震える声で啓太を呼んだ。
「啓、太……?」
『殴らないの……?』
そんな意味のこもった呼びかけに、啓太は視線を伏せる。
そして、表情をしかめた後……あたしに視線を戻した。
同時に肩を持っていた手に力が込められて、ぐっと引き寄せられる。
「やっ……な、に……?」
「なにって、んなの決まってんだろ?」
「やっ、……啓、太……やだっ」
押さえつけるようにして顔を近付いてくる啓太に、あたしは肩を竦めて啓太の胸を押し返す。
「なんだよ、やだって……」
怒りを含んだ啓太の声。
緩んだ力に少しだけ安心して、あたしは啓太と視線を合わせないままに答える。
なんで、嫌か、なんて……
そんなの―――……っ、
「誰とでもするなら……キスなんか、したくない」
「は?」
「啓太はっ……この間駅前を一緒に歩いてた子とも、これから会う子ともそういう事するんでしょ……?
平気で……キスとかできるんでしょ……?
あたしは……、そんな啓太とキスなんか……したくない」