甘い魔法―先生とあたしの恋―
あたしだけを見てよ……っ。
他の女の子と、そんな関係になったりしないで――――……。
ずっとずっと心の中にあった、強い気持ち。
誤魔化してきたけど……本当は、ずっと心の中心にあって、患い続けていた気持ち。
それを言葉に出せば、今度は間違いなく……
それでも言葉になって出たのは、もう、限界が近かったからかもしれない。
啓太とのこの関係を……、
誤魔化す事に、限界を感じていたからかもしれない―――……。
これから何をされるのかは分かっていて。
逃げるなんて選択肢を持っていないあたしは、啓太が取る行動を眺めていた。
啓太が手を振り上げたのを見てから目をギュッと瞑る。
聞こえるのは……、啓太の手が風を切る音―――……。
何度叩かれても慣れない恐怖に、身体が自然と竦んでしまう。
……―――だけど。
「……?」
頬に当たったのは、ふわっと撫でるような風だけだった。
その風に……、クローゼットの中のクッションと同じ香りが混ざっている事に気付いて、ゆっくりと目を開ける。
「……なにしてんだよ」
「……―――っ」
そこには、啓太の腕を掴む矢野の姿があって……、啓太は掴まれた手を振り払って、矢野に視線を移した。