甘い魔法―先生とあたしの恋―


あたしだけを見てよ……っ。

他の女の子と、そんな関係になったりしないで――――……。



ずっとずっと心の中にあった、強い気持ち。

誤魔化してきたけど……本当は、ずっと心の中心にあって、患い続けていた気持ち。

それを言葉に出せば、今度は間違いなく……


それでも言葉になって出たのは、もう、限界が近かったからかもしれない。


啓太とのこの関係を……、

誤魔化す事に、限界を感じていたからかもしれない―――……。


これから何をされるのかは分かっていて。

逃げるなんて選択肢を持っていないあたしは、啓太が取る行動を眺めていた。


啓太が手を振り上げたのを見てから目をギュッと瞑る。


聞こえるのは……、啓太の手が風を切る音―――……。

何度叩かれても慣れない恐怖に、身体が自然と竦んでしまう。


……―――だけど。


「……?」


頬に当たったのは、ふわっと撫でるような風だけだった。

その風に……、クローゼットの中のクッションと同じ香りが混ざっている事に気付いて、ゆっくりと目を開ける。


「……なにしてんだよ」

「……―――っ」


そこには、啓太の腕を掴む矢野の姿があって……、啓太は掴まれた手を振り払って、矢野に視線を移した。




< 77 / 455 >

この作品をシェア

pagetop