甘い魔法―先生とあたしの恋―


「おまえ、今何しようとしてた?」

「なんだよ、てめぇ……」

「まさか女相手に手あげようとしてた訳じゃねぇよな?」


少し挑発するような矢野の口調に、啓太の苛立ちが増していくのが見て取れて、慌てて口を開く。


「あ……矢野、違っ……」

「だったらなんだよ。……関係ないだろ?」


だけど、あたしの小さな声は啓太の声に遮られてしまって。

どうしていいのか分からない状況に、焦りながら2人の顔を見比べていた。


「関係ねぇけど、女に手あげるのを黙って見てる訳にもいかねぇだろ」

「つぅか、こいつ俺の女だし? どうしようが俺の勝手じゃね?」


その言葉に、啓太もまだ彼女だって思ってるんだ、なんて場違いな安心が浮かび上がる。

……その感情に、じゃあなんで優しくしてくれないんだろう、なんていう悲しさが混ざる。



ぼんやりと啓太の横顔を眺めていて……、不意に気付いた視線に、あたしは目を伏せる。


矢野から送られてくる、痛いくらいの視線。

矢野はきっと啓太の言葉で、今までの事全部の理由が分かったハズ。

そんな矢野から送られる視線に責められてるように感じて……、目を合わせる事が出来なかった。


「……自分の女なら余計に大事にしなきゃだろ。

一番大事な奴傷つけてどうすんだよ」

「……―――っ」


矢野の言葉が、胸に突き刺さる。

深く深く突き刺さって……その痛みに涙が溢れそうになった。




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