甘い魔法―先生とあたしの恋―


「……何?」

「おまえ何型?」

「……Aだけど、何?」

「俺も。じゃあキレイ好きだよな? 整理整頓とか得意分野だよな」

「……なんで?」


いきなりの血液型話題に苦笑いを浮かべる。


正直……掃除は好きじゃないし。

友達には『絶対O型だよね』って定評があるし。

大雑把だし、細かいこだわりってないし、神経質でも何でもないし。


あたしの苦笑いに、矢野は真剣な目で話し始める。


「だってよく考えてみろよ。

こんな壁の薄い建物で、おまえの部屋にゴキブリだとかねずみが出てみろ。

確実に俺の部屋までやられるだろぉが。

こんなボロいのにそんなんまで出たら最悪だからな」

「……」

「俺、不潔なのとか耐えられねぇから。絶っ対に、部屋汚すなよ?」

「……なるべく」

「俺の言った事聞いてた? ……絶対だろ?」

「……じゃあ、……なるべく絶対」


くだらないやり取りをしてから部屋の鍵を開ける。

カチャン……となんとも軽い音を立てて開いた鍵に、あたしは呆れてため息を漏らす。

こんなの、ピッキングされたら絶対一発だ。

あたしですら出来そう。





< 8 / 455 >

この作品をシェア

pagetop