甘い魔法―先生とあたしの恋―
「……何?」
「おまえ何型?」
「……Aだけど、何?」
「俺も。じゃあキレイ好きだよな? 整理整頓とか得意分野だよな」
「……なんで?」
いきなりの血液型話題に苦笑いを浮かべる。
正直……掃除は好きじゃないし。
友達には『絶対O型だよね』って定評があるし。
大雑把だし、細かいこだわりってないし、神経質でも何でもないし。
あたしの苦笑いに、矢野は真剣な目で話し始める。
「だってよく考えてみろよ。
こんな壁の薄い建物で、おまえの部屋にゴキブリだとかねずみが出てみろ。
確実に俺の部屋までやられるだろぉが。
こんなボロいのにそんなんまで出たら最悪だからな」
「……」
「俺、不潔なのとか耐えられねぇから。絶っ対に、部屋汚すなよ?」
「……なるべく」
「俺の言った事聞いてた? ……絶対だろ?」
「……じゃあ、……なるべく絶対」
くだらないやり取りをしてから部屋の鍵を開ける。
カチャン……となんとも軽い音を立てて開いた鍵に、あたしは呆れてため息を漏らす。
こんなの、ピッキングされたら絶対一発だ。
あたしですら出来そう。