甘い魔法―先生とあたしの恋―
昨日から矢野のご飯が普通盛りになった。
矢野が言ったのか、中村さんが気付いたのかは不明だけど。
ご飯を眺めていると、矢野の視線に気付いて、顔を上げる。
「……なに?」
「おまえ、顔色悪くねぇ?」
「え……あー、ちょっとね。でも大丈夫。
あ、そろそろ行かなくちゃ」
「あんま無理すんなよ。……つぅか、おまえ毎日夜更かししすぎだろ」
「……あれくらい普通だよ。矢野と違って若いから大丈夫」
苦笑いと憎まれ口を返して立ち上がると、重たい身体を引きずるようにして食堂を後にした。
※※※
「実姫、体育大丈夫? 休めば?」
げた箱で運動靴に履き替えながら諒子が言った言葉に、少し唸ってから口を開く。
「んー……でも大丈夫。つらくなったら休むよ」
「そ? 無理しないでよ?」
水曜日の2時間目の体育は、毎週男女合同で行われる。
基礎体力がどうのって、体育の先生は説明してたけど……。
校庭を何周も走るだけの疲れる授業なんて、不評もいいとこだった。
っていうか、先生自体もアレだし。
固い頭で横暴な言い方ばっかりするせいで、女子にはもちろん、男子にも嫌われてるし。