甘い魔法―先生とあたしの恋―
体育とか選択教科は2クラス合同でするから、クラスは違っても、和馬と一緒になる事はなにかと多くて。
何かある度に過敏に心配する和馬のせいで、あたし達の仲を誤解している生徒も少なくなかった。
「ほら、実姫」
「や……大丈夫だか……っ?!」
担ぐ気満々の和馬に苦笑いを浮かべながら首を振ろうとした瞬間。
身体がゆっくりと浮き上がるのが分かった。
気付くと、矢野に腕に抱き上げられていて……、慌てて口を開く。
「ちょっ……矢野! 下ろして!!」
暴れ出したあたしに、矢野が迷惑そうに表情をしかめる。
「なんでだよ。お姫様抱っこなんて女なら誰でも憧れてんだろ? 大人しくしとけ。
つぅか、『先生』って呼べ」
「っていうか、怖いからっ!」
たった2ヵ所のみで支えられてるこの体勢は、かなり不安定に思えて……。
しかも矢野が歩く度に、振動が伝わってきてものすごく心臓に悪い。
必死に抵抗するあたしに、矢野はふっと笑みを零して、ゆっくりとあたしを下ろしてからその前にしゃがんだ。
「じゃあこっちな」
言われた言葉の意味を理解して、少し戸惑ったけど……顔に血が集まるのを感じながら、矢野の背中に抱きついた。
「怖いって、高所恐怖症?」
矢野の声がすぐ近くから聞こえてきて……恥ずかしさから困惑する。