甘い魔法―先生とあたしの恋―
「いらっしゃいませー……」
あたしが来る時間帯は大体同じバイトがレジに立ってる。
だるそうな挨拶が耳に残って、落ち込んだ気持に拍車をかける。
……いっその事面倒なら言わなくていいのに。
そんな風に心の中で毒気づきながらペットボトルを2本、棚から取り出した。
そして棚に背中を向けた時、ふと飴のコーナーが目に留まって……矢野からもらった飴が頭に浮かんだ。
なんとなく同じものを探してみたものの、同じ味のものはあっても、まったく同じものは置いてなかった。
レジを澄ませて、結構な重さのビニール袋を受け取る。
持っていたお財布もビニール袋に入れて、コンビニを出た時。
視界に入り込んできた光景に、時間が止まった。
「……啓太」
こっちに向かって歩いてくる啓太と知らない女の子に……目が、釘付けになった。
歩いてくる啓太が顔を上げて、立ち尽くしているあたしと視線がぶつかる。
「あれ、実姫じゃん」
無視されない事に、一瞬だけほっとして……女の子の前で、あたしの名前を呼んでくれた事に少し嬉しくなる。
でも……。
「啓太くんのお友達?」
啓太の服を掴みながら聞く知らない女の子に、啓太が視線を移して……首を傾げる。
「ああ、ちょっとな。たまに暇つぶしで遊ぶくらいだけど」
「なにそれー。なんか怪しい」
「怪しくもなんともねぇよ。……真面目すぎて遊びにもなんねぇし。じゃあな、実姫」
啓太がコンビニの中へ入って、自動ドアが静かに閉まる。