【短編】Horoscope*Daring〜星占いの恋人〜
雪の日の記憶
コンコン――…
2階の突き当たりの部屋。
そこが琉聖君の部屋だと聞いて、ドアをノックするものの、一向に返事は無い。
シン…と静まった2階の廊下で、琉聖君の手の傷を思い出して。
いてもたってもいられなくて、……私は恐る恐る、ゆっくりとトアノブを捻った。
そっとドアを開けたその先には、窓から入る曇りがかった陽光で僅かに照らされているだけだった。
「琉聖、君……?」
その窓の傍のイスに座り、壁に半身を凭れさせて外を見つめる琉聖君は、
チラリ…と一度だけ視線を向けてくれたものの、スグに視線は窓の外へと戻っていた。
ハラハラ舞い落ちる雪を見つめているらしい琉聖君は、無表情で。
『雪の日は塞ぎ込む』
『早く帰ってきたのも、喧嘩したのも雪だから』
……そんな、さっきのお母さんの言葉を思い出した。