十人十色-それぞれの恋- 短編集
「なんだ?」
「恵介って、好きな人いるの?」
思いもよらない質問に驚きを隠せなかった。
篠原は無表情で聞いてくる。
なんか変だなと思いながらも、話した。
「いるよ」
「どんな人?」
どんな人…か。
「鈍感で、可愛い奴。だな」
「その人の、どこが好きなの?」
「全部かな。鈍感なところも、ドジなところも…あと、笑顔が可愛いところも、全部好きだよ」
そう言うと、篠原は俯いた。
あれ…俺、何か変なこと言った?