十人十色-それぞれの恋- 短編集
「この春、私達は高校を卒業します。たくさんの思い出のあるこの校舎とも、もうお別れです。ここでの思い出はきっと一生忘れることはないと思います。皆で笑ったこと、泣いたこと、怒ったこと…全部全部大切な思い出です。これからはそれぞれ別の道を歩んでいくと思います。そこではきっと、辛いこともあるでしょう。その時は、楽しかった高校の事を思い出してください。皆のことを思い出してください。きっと辛くなくなります。いつでも、皆は味方です。この高校で学んだことを大切にし、私達は一歩ずつ進んで行きたいと思います。そして、在校生の皆さん。この高校でたくさんのことを学び、感じ、思い出をいっぱい作って卒業してください。高校生は、人生で1度しかありません。一日一日を大切に過ごしてください。 3年A組長山葵梨」
ペコッとお辞儀をし、ステージを降りて自分の席に着く。
「続きまして…在校生代表、霧島航平」
「はい」
航平はすくっと立ち、ステージに上がっていく。
私はずっと航平を見ていた。
「卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。……~~……~」
航平の言ってることなんて、全く耳に入らなかった。
ただ今は、航平を見ることに集中していた。
だって、これがきっと最後だから。
航平をこの学校で見る最後。