十人十色-それぞれの恋- 短編集
「すいません、金ないです。じゃ、失礼します」
柚羅の手を引っ張って、部屋を出ようとする俺の肩を部長が掴んだ。
「そんなんで、許されると思ってんのか?」
「いいかげんにしてください。ないものはないんです。じゃ…」
そう言うと部長が、俺の肩から柚羅の腕へ手を動かした。
「柚羅は俺のだ」
プチン
俺の中で何かがきれた。
金借りて、それで俺のだ?
アホじゃねーのこいつ。
俺は気づいたら、部長を殴っていた。