私、海が見たい
** 木曜日 **
  ***** 木曜日 *****


綾は、大股でゆっくり、歩いていた。

しかし、時々、早足になり、
また、ゆっくり歩き出す。

そんなことを繰り返しながら、
学校へ続く土手道を歩いていた。


春には、桜並木になるのだが、
今は1月末の木曜日。

まだ芽も硬い桜の枝が、
頭上に張り出している。


朝ともなるとその道を、小学生や中高生、
会社員たちが、駅へ、学校へと歩いて行く。

所々で「オハヨウ」の声が飛び交う中、
綾が歩いている。

綾は、東京近郊の高校2年生。

遠くから、自転車に乗った友達が声をかける


「綾ー、おっはようー」


「おはよう」


綾は、声のした方を向き、
軽く手を上げて微笑み、また前を見る。


綾の少し前を、同級生の聡が歩いていた。

綾は聡の後ろ姿を見ながら、
同じリズムで歩いている。

綾は、聡と同じリズムで歩く事によって、
密かな一体感を楽しんでいた。

しかし聡の一歩は大きく、
時々早足にならなければ、
離されてしまうのだった。


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