私、海が見たい
その体育館の2階観覧場では、
女の子3人が輪になって話をしていた。
その輪の中に綾がいる。
話自体は、たわいのない物だったが、
綾からは、下のアリーナが見えた。
綾の友達、沙耶と麻衣の2人は、
綾の、見え見えの行動に、
薄々、勘づいていたが、
知らないふりをしていた。
その方が、面白いからである。
二人は、バレかけになった時の、
綾のドギマギした表情が、
面白くって、たまらなかった。
だから、あえて知らないフリをして、
時々、際どい質問をしては、
綾の反応を見て、楽しんでいたのだった。
アリーナでは、
また皆走ってポジションにつき、
練習が再開する。
再び、コーチの大きな声が響き渡ってきた。
「パスだ。パス」