私、海が見たい
恵子が、落ち着きをとりもどし、
中村に向かって、
「だから私、
この子と離れる危険を冒すより、
自分を殺す道を選んだの。
それに、この子には、
障害に対応できる病院が必要なのよ。
前に、言ったでしょう?
だから、田舎では暮らせないの」
「そやから俺が、
神戸で暮らそうと言ったやないか」
少し考えていた恵子は、
「そうよね。そう言ってくれたわよね。
そのためには家を捨ててもいいと」
「ああ、そうや」
「でも、そんなことしたら、
ご両親が悲しむわよ。
家の仕事を継いでくれたと、
喜んでいるのでしょう?」
「そんなん、ええんや」
「いいえ、だめよ。あなたには、
もっと幸せな人生があるはずだわ」
「だから、俺は、君といられる事が
一番の幸せなんやって」