私、海が見たい
「でも、私も好きな人ができて、
その人が嫌だと言ったら?」
綾の頭の中に、一瞬、聡の姿が浮かんだ。
通学路。綾と目が合った時の聡の顔
「それは君が
どれだけ姉さんのことを
大事に思っているかによるな。
君が姉さんのことを思っている限り、
そんな人を好きにはならないさ。
君が好きになる子は、
みんな優しいんじゃないのかな?」
しばらく手の中の砂の山を見ながら、
考えていた綾は、
手を払いながら立ち上がって、
中村の方へ来る。
「ちょっと寒くなってきちゃった」
「じゃあ、車に戻ろうか」
「あーあ、靴の中、砂だらけ」
二人、駐車場に向かって歩いて行った。