私、海が見たい

綾は、母と姉の事を思い出していた。


  綾の家のダイニング。夜。
  食卓についていた亜季が、突然怒り出し
  机の上の食器を投げる。
  亜季を後ろから抱きとめて、
  やめさせようとする恵子。
  大声で、もがく亜季。
  悲しそうな顔で、
  必死に抱きしめるだけの恵子。


中村の声が聞こえる。

「お母さんはね、一生懸命生きてきたんだ。
 君たちのためにね」


  綾の家のダイニング。昼。
  笑顔の綾や亜季たちを前に、
  楽しそうに笑っている恵子。
  その笑顔は突き抜けている。


「誰かのために生きられるって事は、
 素晴らしいことじゃないか」

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