私、海が見たい
---- 夕食 ----


家族で夕食の時。

お母さん恵子、お姉さん亜季、綾が、
食卓について食事している。

亜紀は黙って、黙々と食べている。

綾が、さっきのことを思い出しながら、


「ねえ、お母さん。花言葉って、
 知ってる?」


「ええ。少しはね」


「じゃあねぇ、カーネーションは?」


「えーっと。母の日じゃないし」


「ハハハハ、それ、私と同じレベル」


「うーん、と、何だったかしらね」


「じゃあ、チューリップ」


「それはね、えーっと。知ってたんだけど」


「それじゃあ……、さくら草は?」


「それは、は・つ・こ・い」


「へえー、これ、知ってるんだ。
 ……なんで?」


「今はどうか知らないけど、
 お母さんの頃はね、
 少女漫画によく使われていたのよ。
 だから、いろんな花言葉、
 自然と、知っていたわ。

 今はもう、ほとんど
 忘れてしまったけどねぇ」


恵子は、少し上を見上げて、
何かを思い出すかのように、


「でもなぜか、さくら草だけは、
 いまだに憶えているのよね」

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