私、海が見たい

電車が着いたのか、人が出て来始めた。

改札口から恵子と亜季が出てきた。

「おっと」


中村が、キーホルダーを落とし、
拾おうとかがみこむ。

恵子が、駅を出て見回し、
久美子と綾を見つけて、パッと笑顔になる。

恵子の顔を見て、
綾の目からは涙があふれてきた。

「お母さん」


走って、恵子に抱きつく綾。

勢いで、半回転した恵子は、
気を付けの姿勢で抱きつかれて、
身動きできず、爪先立ちで、
恥かしそうにあたりを見回し、

「あら、あら、この子。どうしたのよ」


「なんでもない。なんでもないの」


「ちょっと、離しなさいよ。
 みんな見てるでしょ」


「いいの。いいの」


「まあ、本当にどうしたの、綾ったら」 

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