私、海が見たい

綾を伴って、久美子と中村のほうへ
恵子がやって来た。

亜季も少し遅れて、後からついてくる。

久美子の前に来て、

「久美ちゃん、いろいろありがとう」


「あら、いいのよ。でも、残念ねぇ。
 もう少し綾ちゃんの世話が、
 したかったんだけど」


「ごめんね。
 いろいろ迷惑かけちゃって」


「あら、あら、いいのよ、そんなこと。
 あなたと私の仲じゃない」


嬉しそうに、久美子が言う。

「私、この二日、本当に
 楽しかったんだから。
 お礼を言うのは私よ。

 綾ちゃん、あ・り・が・と……。
 また来てねっ」


「はいっ」


綾は、笑顔でうなづく。


恵子は次に、中村の前に立ち、遠慮がちに、

「中村君…………、久しぶり…………、
 元気そうね……」


「ああ、君も」


「メール、ありがとう」


「いやっ…、ゴメンなぁ。
 あんなメール、送って」


恵子は、そんなことは無いと言いたげに
静かに首を横に振ると、
亜季を横に引き出した。

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