私、海が見たい

中村は、昔の亜季の姿を、
思い出そうとしていた。



  ベビー・ベッドに寝ている亜季と、
   横にいる二人の姿。

  喫茶店で足をブラブラさせている亜季と
  それを見ている二人。



しかし、中村は、その後の亜紀のことは、
知らなかった。


「この子が、………亜季なの…………。
 大きくなったでしょう?」


「ああ……。いい娘さんになったよね」


亜季は、誰だろうというように首を傾げて、
中村を見上げている。

笑顔で二人を見る中村だが、
中村の目にも、うっすら涙が。

「じゃあ、帰りましょうか。
 久美ちゃん、本当にありがとう」


「えー、もう帰るの?
 今来たばっかりじゃないの」


「ごめん、明日、学校もあるし……、
 また、帰ってきたら、連絡するわ」


「残念ねぇ。いろいろ話したかったのに。
 まっ、しかたないか。
 また、連絡ちょうだいね」


「うん。

 …中村君も、……………
 どうか……、お元気で…」

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