私、海が見たい

恵子が、軽く会釈をして、
二人に背を向け歩き出そうとした時、
綾が亜季の手をとり、

「お姉ちゃん、行こっ」 


そう言って、亜季を引っ張るようにして、
歩いて行った。

それを見て、びっくりして振り返る恵子。

笑顔の中村が、うなずく。

それを見て、恵子も、微笑み返した。

恵子はまた、背を向け、
二人のほうに歩いて行った。

亜季と手を繋いでいた綾が振り返り、
中村たちに高く手を上げ、大きく振る。

亜季も振り返る。

「おばさん、ありがとう」


「まっ、おばさんだなんて」 


そう言いながらも、笑顔で手を振る久美子。

中村は唇に人差し指を立てて当てている。

綾は、それを見て、笑顔でうなづき、

「おじさん、バイバーイ」


後ろにいた恵子が振り返り、
大きなおじぎをして、駅の中に消えて行った

笑顔で手を振る久美子。

中村も片手を上げゆっくり振っている。

「俺だって、最後まで、おじさんだぜ」

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