私、海が見たい
** 月曜日 **

次の日、月曜日、放課後。


住宅街、
夕方、もうあたりは暗くなっている。

部活が終ったのだろうか、
自転車を押している弘幸と、
一緒に歩いている聡が、やって来た。

「でも、今日のコーチは、
 怖かったよなぁ」


「ああ。でも、それはお前が、
 あんなミスするからじゃないか。

 ありゃ、コーチ、怒るわなっ」


「えっ、いや。それは、
 お前のパスのせいじゃないのか?」


「そうかぁ?あのパスは……」


「あっ、じゃあ、俺、こっちだから」


「ハハハ。うまく、逃げやがった。
 ……じゃあな」


笑顔で、弘幸に手を振る聡。

弘幸は自転車に乗って、
角を曲がって、帰って行ってしまった。



一人、歩いて帰る、聡。

その少し後ろを、綾が歩いている。

同じリズムで、同じ距離で、
二人は歩いている。

綾は胸に、筒状のものを、
右手で大事そうに抱えている。

綾が小さくうなづき、リズムを早める。

次第に近づく綾と聡。

「聡くん?…………、あのぅ……」

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