私、海が見たい
** 金曜日 **
----- 朝食 -----
次の日の朝、恵子、亜季、綾が、
食卓について朝食を取っていた。
綾はどうしても、携帯を諦めきれなくて、
もう一度、母に頼んでみる事にした。
「お母さん、携帯なんだけど……」
「何っ。まだ言ってるの。
ダメだって言ったでしょ」
「でもー…」
「何度言っても無駄よ。
ダメなものはダメです」
「だってぇー…」
亜紀が、ボソリと言う。
「そうよ、ぜいたくよ」
綾は、亜季の言葉は無視した。
「じゃぁ、あしたは土曜日だから、
お父さんが帰ってきたら、
聞いてごらんなさい。
きっと、ダメだと言われるに、
決まってるでしょうけどね」
「でも、明日は、お父さん、
帰ってくる日じゃないよ」
「あらっ、そうだったわね。
じゃあ、電話して訊いてみる?」
「今だったら、お父さんまだ、
部屋にいると思うから」
「もう、いい」
そう言った後、黙って下を向いて食事する綾
「ごちそうさま」
亜季は、席を立つと、
綾の後ろを通りにくそうにして二階へ行く。
無視する綾。
朝食を残して、黙って席を立ち二階へ行く綾
「あらっ、もういいの?」
返事は無い。
「綾。何か、忘れ物?」
恵子が声をかけるが、やはり、返事は無い。