私、海が見たい
聡の横を走りぬけようとした小学1年生の
男の子が、前につんのめり転んだ。
「あっ」
綾の口からつい、声が出る。
聡も気がついて立ち止まり、
横でうつぶせになっている男の子を
じっと見ていた。
綾も止まって、その子を見ている。
泣いてはいないし、けがもなさそうだ。
「いてぇ」
子供は上体を起こすと、腰をおろして、
パンパンと手に付いた土を払った。
それから、痛そうに膝をなでたが、
少し擦りむいた程度で、
血は出ていないようだった。
「あらら」
近くにいた同じクラスの涼子が、
駆け寄って、子供を立たせてやる。
「大丈夫?」