私、海が見たい
恵子が掃除をしていると、電話が鳴った。
「はい、はい」
電話のところへ行き、受話器を取る恵子。
「はい、高島です」
「あっ、私、綾さんの担任の鈴木ですけど、
お母さんですか?」
「はい」
こんな時間に学校から電話がある事は、
普段は考えられない。
“きっと、綾の身に何かあったに違いない。
もしかして、交通事故?”
恵子は、担任の次の言葉のために、
身構えた。
しかし、担任の言葉は、
恵子が考えたものとは、違っていた。
「綾さん、来ていないんですけど、
今日は休みですか?」
担任の、少し間延びした言葉に、恵子は、
すぐには、事態を理解できなかった。
「えっ。あっ、いえ、朝、
出て行ったと思うんですけど」
「いや、来てないんですよ。
どうしたのかなぁ?
昨日何か……」
「ちょっと…………。
ちょっと、待ってください」
恵子は、慌てて2階へ上り、
綾の部屋へ行った。