私、海が見たい
すると涼子は、聡を見て、
「ちょっと、聡くん。見てないで、
助けてあげたらどうなのよ」
と、責め立てるように言った。
しかし、聡の返事は、
「自分で起きられるだろ」
と、そっけなかった。
「そうだよ。自分で出来るんだよっ、
ババア」
そう捨て台詞を吐いて、
小学生は立ち上がり、また走っていった。
「まぁ」
プッとふくれる、涼子。
それを見て、思わず笑顔になる綾。
聡も笑顔になり、目を上げ周りを見る。
その時、綾と一瞬目が合った。
驚いて、視線を下げる綾。
聡はまた、何事も無かったように振り返り、
歩き始めた。
そして、また、聡の後姿を見ながら、
少し離れて付いて行く綾。
涼子の横を通り過ぎる時、
「おはよう」
そう声をかけたが、涼子は、
まるで聡が悪いかのように聡を睨んでいて、
綾の言葉は聞こえていないようだった。