私、海が見たい

すると涼子は、聡を見て、


「ちょっと、聡くん。見てないで、
 助けてあげたらどうなのよ」


と、責め立てるように言った。

しかし、聡の返事は、


「自分で起きられるだろ」


と、そっけなかった。


「そうだよ。自分で出来るんだよっ、
 ババア」


そう捨て台詞を吐いて、
小学生は立ち上がり、また走っていった。



「まぁ」


プッとふくれる、涼子。

それを見て、思わず笑顔になる綾。

聡も笑顔になり、目を上げ周りを見る。

その時、綾と一瞬目が合った。

驚いて、視線を下げる綾。

聡はまた、何事も無かったように振り返り、
歩き始めた。

そして、また、聡の後姿を見ながら、
少し離れて付いて行く綾。

涼子の横を通り過ぎる時、


「おはよう」


そう声をかけたが、涼子は、
まるで聡が悪いかのように聡を睨んでいて、
綾の言葉は聞こえていないようだった。

< 3 / 171 >

この作品をシェア

pagetop