私、海が見たい

「でもね、知らせなかったら、
 私が恵ちゃんに叱られちゃうわよ。
 絶対、心配してるんだから」


久美子は携帯を開き、電話しようとした。

すると綾は、再び顔をあげ、少し大きな声で
久美子に向かってすがるように


「じゃあ、三日。
 三日だけ黙っていてください」


「でもー ……」


「お願いします。三日だけ………」


しばらく沈黙が続いた。

携帯を振りながら考えていた久美子は、


「わ・かっ・た。三日だけよ。
 三日したら、お母さんに知らせるから、
 ねっ」


携帯を閉じ、立上がり、
バッグにしまう久美子。


「何か事情があるみたいだけど……。
 何が、あったの?」


綾は黙ったまま。

しばらく綾を見ていた久美子は、


「じゃっ、それも訊かなーい。
 話したくなったら、言ってね」


「すみません」


「あーあ、お茶、もう冷えちゃったじゃない
 ちょっと入れなおしてくるわね」


「あの…、お母さんには……」


「わかってるわよ」


居間から出てゆく久美子。


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