私、海が見たい

次の日。
恵子が2階へ声をかけた。

「お母さん、買い物に行ってくるからねー。
 何か、買ってきて欲しい物、ある?」


2階から、綾のぶっきらぼうな声。

「無い」



恵子が出かけた後、
綾が二階から降りてきた。

あたりを見回して、
恵子がいないことを確かめると、
部屋に入り、綾はパソコンを立ち上げる。

「えっと、お母さんのパスワードは、っと」


パスワードを入れ、
”最近使ったファイル”を見る。

”観音寺便り”というメールがある。

それを開いて見る綾。

「かんのんじ?……なかむら?
 …………これかな?」


じっと画面を見る綾。

読んで行くにつれ、
次第に不機嫌な顔になってゆく。


  暗い中、
  パソコンの前で泣いている母の後姿。


じっと画面を見る綾。

「何、これ」


つぶやく綾。

綾は母親に不信感を抱いた。

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