私、海が見たい
中村は立ち上がって、頭に手をやり、
「そんなに、かしこまられても…………、
弱ったなぁ」
しばらく頭をかきながら、
綾を見ていた中村は、
「そうだ。せっかく来てくれたんだ。
よかったら、どこかへ、
ドライブにでも行かないか?」
「えっ、でも……」
「ハハハ、取って食ったりしないよ」
綾の警戒感は、解かれていた。
「いえ……、仕事があるんじゃぁ………」
「いや、いいんだ。
ここのところ何も仕事がなくてね。
もう、暇でヒマで。どこか、行こっ」
「そうだなぁ…………じゃあ………」
考えていた綾が顔をあげ、
中村を見上げて、明るく、
「私、海が見たい」