私、海が見たい
雄太の横を通り過ぎながら、
友達が声をかける。
「おい、大丈夫か?」
「ああ」
「気をつけて上れよ。
落ちると怪我するぞ」
「もう、してるって」
綾は、“だったら、手を貸してやれよ”
そう思った。
言葉だけで優しさを示すのは、誰でも出来る
恐らく聡は、何かあったときのために、
後ろに付いているのだろうと、
綾は勝手に解釈した。
優しさをひけらかすやつより、聡のほうが、
よっぽど優しいな、と綾は思った。
雄太が階段を上りきると、
聡は雄太を追い越して、廊下を歩いて行く。
後ろの綾も、階段を上りきると、
雄太を追い越し、等距離でついて行った。
聡が教室に入って行く。
後に続いて、綾も同じ教室に入って行った。