私、海が見たい
中村の次の言葉をさえぎるように、笑顔で、
「ここの人たちは、みんないい人ですね」
「ん?なんで、そう思うんだい?」
「久美子さん。そしておじさん」
「たった二人じゃないか。
それでそんなに思うなんて。
まっ、ここは田舎だから、
ホント、いい人ばっかりだけどね」
「久美ちゃんに会ったってことは、
久美ちゃん家に?」
「ええ。
しばらく泊めてもらうことにしました」
「しばらく?…………。
そうかぁ……、そりゃいいね」
少し、間が開いて、
「そういや、君のお母さんもよく
泊めてもらってるみたいだしね。
よく知っているだろう?
田舎は、情報が早いからね。
あっ、それとね、
敬語はやめてくれないかな、敬語は。
なんか、方々痒くなってくるんだよ」
「でも……」
「最初、事務所に来た時には、
敬語じゃなかっただろう?」
「それもそうね」
「そう、そう、それでいいんだよ」
中村の笑顔を見て、
綾も、思わず微笑んだ。